前回の記事ではオーキシンとはどんな物質なのか、解説しました。
⇒オーキシンとは?わかりやすく解説
オーキシンは主に茎の先端で作られます。
芽生え(芽が出て、土からひょっこり姿を現した状態のこと)の先端という解釈でもOKです。
で、芽生えや茎の先端で作られたオーキシンは下部の伸長部に移動します。
こんな感じで上から下といった感じで縦方向に移動するという性質は
極性に従っています。
ちなみに上から下に移動すると書きましたが、
この記事のテーマである極性移動を理解すると、
オーキシンは上から下に移動するとは限らないことに気づくでしょう。
では本題に入っていきますね。
極性とは?
生物の体の方向性のことを極性といいます。
たとえな、人間だったら頭から足、お腹から背中、左から右とか。
体に方向性がありますよね。
こういう方向性のことを極性といいます。
植物だって極性があります。
茎の先端から根っこまで。
左側の葉っぱから右側の葉っぱまでとか。
こういうのを極性といいます。
で、オーキシンは極性に従って重力の影響をほとんど受けず移動します。
「え、どういうこと?オーキシンは茎の先端という上から下の伸張域に移動しているから
重力の影響を受けているのでは?」と思った方もいるでしょう。
伸張域についてはこちらの記事解説しています。
⇒ボイセン=イェンセンの実験についてわかりやすく解説
とにかく先端にできたオーキシンは下にある伸張域に移動して作用します。
芽生えの先端に片側から光が照射されると、
オーキシンは光の当たらない側に移動してから、
下部に極性移動します。
ちなみに光が当たる当たらないの話で
以前解説したウェントの実験やボイセン=イェンセンの実験では光を使わずにやってます。
光を使わず真っ暗な環境で実験しています。
⇒ウェントのアベナテスト(オーキシン発見につながった実験)とは?
⇒ボイセン=イェンセンの実験についてわかりやすく解説
オーキシンの性質、極性移動とは?
まず図の左側をご覧ください。
左側の図は幼葉鞘(植物の芽生え)です。
2か所を切りました。
ここは先端(図のアより上部の位置)にできたオーキシンができる場所です。
そしてアとイの方向を維持したまま芽生えの切片を
移動します。
で、アの上にウェントの実験で解説したような感じで
オーキシンを含む寒天をのせます。
⇒ウェントのアベナテスト(オーキシン発見につながった実験)とは?
イの下にはオーキシンをまったく含まない寒天を置きます。
で、方向はアイのままです。
ここまま一定時間たったらアベナテストを実施します。
⇒ウェントのアベナテスト(オーキシン発見につながった実験)とは?
すると、するとアベナテスト通りに芽生えは下のイのあたり(伸長域)曲がって伸びるわけです。
ということはアの上にあったオーキシンがアやイの領域にしみこんできたということがわかります。
このように書くと「やっぱりアの上側にあるオーキシンが重力で落ちてきたから
曲がって成長したんじゃないの?」と思った方もいるでしょう。
違います。
その証拠に⓶のようにアと伸長域のイを逆にします。
上にオーキシンがしみこんだ寒天をのせ、
下にオーキシンがない寒天を置きます。
そして一定時間置きます。
結果、下側のオーキシンがない寒天の場所に
オーキシンは落ちてきませんでした。
つまり、重力でオーキシンが落ちてきたわけではありません。
もっと面白い実験が⓷です。
④の実験はオーキシンがしみ込んだ寒天を下に置きます。
で、伸長域のイを上にしてアを下にして
オーキシンを含む寒天を下(アと接する)に、オーキシンを含まない寒天を上(イと接する)にして
しばらく静置しました。
その後、アベナテストするとイの伸長域で曲がります。
⇒ウェントのアベナテスト(オーキシン発見につながった実験)とは?
もちろん、これらの実験は縦(上下)でやってます。
つまり、オーキシンの移動は重力じゃなくて、
この植物体(芽生え)の先端(ア)から中心(イ)へという流れなわけです。
だから⓶のような下側にあるアにオーキシンがない寒天を接着させても
何も起こりません。
上記図には書きませんでしたが、
もし上側にア、下側にイというそのままだけど、
アの上にオーキシンを含まない寒天、イの下にオーキシンを含む寒天を置いても
何も起こりません。
これが極性移動です。
重力の影響で動いているわけではありません。
先ほど、植物には極性があるといいましたね。
極性というのは例えば、茎の先端から根っこまでみたいな話です。
つまり、オーキシンは重力と関係なく芽生えの先端から中側という極性に従って移動するから極性移動というわけですね。
わかっていただけましたでしょうか。
ちなみにこの極性移動。
たとえば呼吸の阻害剤を使うと、極性移動は起こらなくなります。
だから極性移動は重力も関係ないのに加えて、
呼吸によるATPのエネルギー関係しているということです。
次の記事ではオーキシンの働きについて解説します。
⇒オーキシンの働きについてわかりやすく解説