11月下旬、こんな寒い冬の時期に
虫がいっぱいたかっている花を発見しました。
よく見たらヤツデの花でした。
普段は大きなうちわみたいな葉っぱだけしかないヤツデですが、
11月下旬くらいの時期だと花が咲いていて、
ほぼ必ず虫がたかっています。
ヤツデにたかる虫ってたいていハエの仲間です。
個人的には見栄えが悪いです。
近寄りがたい気がします。
まぁ、11月下旬という寒い時期にチョウチョとか
存在しないでしょうから、仕方のないことかもしれませんが。
ともあれ、ヤツデの花にハエなどの昆虫が
大量に集まってくる理由って何なのでしょうか?
詳しく解説していきますね。
なぜヤツデの花に虫がやってくるの?
ヤツデは両性花
ヤツデは両性花です。
両性花とは1つの株に雄しべと雌しべの両方存在する花のことです。
例えばトマトやナスはや両性花の典型例になります。
とはいえ、ヤツデの場合、両性花の中でも
特殊で最初に雄花が先、そのあと、雌花に変化します。
そして雄花の時期を雄性期、雌花の時期を雌性期といいます。
1つの株に対して同時に雄花と雌花が咲いているわけではないってことです。
で、雄性期のときは花びらも花粉もあるのですが、
雌性期になると花びらは落ちてしまい
その代わり、雌しべが伸びてきます。
こんな感じで雄性期の後に雌性期がくるような
成長の仕方を『雄性先熟』といいます。
生き物の世界で雄になったりメスになったりすることを
性転換といいますが、植物でもオスからメスに変化するタイプも存在するわけですね。
ちなみに生き物で性転換するものとして
オスからメスになる雄性先熟だとクマノミが
逆にメスからオスに性転換する雌性先熟だとアカハラヤッコがいます。
ところで雄性期でも雌性期でも蜜が出ます。
雄性期の時は花粉を昆虫に運んでもらうためで
雌性期の時は雄性期の時に昆虫がつけた花粉をつけてもらうためです。
ではどうして雄性期と雌性期があるのでしょう?
近親交配を避けるためだと言われています。
例えばヤツデがそこに10株存在していても
微妙に花が咲く時期がずれます。
Aというヤツデは現在、雄性期で昆虫が花粉をつけたとしましょう。
同時期、Bというヤツデは雌性期ってことがあります。
Aのヤツデの花粉をつけた昆虫うがBのヤツデの蜜を吸うと
それで受粉し子孫が残っていきます。
また、近親交配を避けることに成功しています。
こんな感じで、雄性期と雌性期が存在することで
近親交配を避けることができるわけです。
近親交配がよくない理由は動物と同じで
性質が落ちる子孫ができる可能性を避けるためです。
ちなみに同じAのヤツデで受粉してしまうことを同花受粉と言います。
つまりヤツデは雄性期と雌性期があって時期がズレることで
同花受粉を避けることができるってことです。
なぜヤツデの花に虫が寄ってくる?
ここまで解説してきたように
ヤツデは雄性期と雌性期があって、
それぞれの時期で蜜が出ます。
そして雄性期では蜜を昆虫が吸った時に花粉がつき、
雌性期では蜜を昆虫が吸ったときに花粉をつけられ、
受粉が成立します。
そうやって子孫を残すためにヤツデなりに進化してきたということです。
こういう植物を虫媒化(チュウバイカ)と言います。
しかもヤツデが花を咲かせるのは冬です。
冬に咲く花なんて少ないですよね。
冬に咲く花ってやつで以外だと山茶花とか、
かなり少ない種類しか存在しません。
→山茶花を植えると縁起悪いといわれる理由とは?
でも、冬でもアブとかハエなどの昆虫は存在します。
多くの飛行する昆虫は蜜を吸うものです。
なので、冬に花を咲かせて蜜を出してくれるヤツデは
アブやハエにとってありがたい存在なのです。
冬の寒い時期に栄養を摂取できるため
昆虫からしたらヤツデは貴重な栄養源と言えるでしょう。
逆にヤツデからしてみても、
ヤツデの花は見た目がちょっと不気味です。
もし夏みたいに他にもいろんな種類の花がいっぱい咲いている時期に
ヤツデが花を咲かせても、ライバルだらけで
自分の蜜を吸ってくれる可能性が低いかもしれません。
あえて冬に花を咲かせることで
ある意味ブルーオーシャン的な感じで
他にライバルの花が存在しないため、
ヤツデに昆虫がいっぱい昆虫が集まってきてくれるってことです。
以上のように冬、他に咲いている花がない時期に
蜜を出してくれるヤツデは昆虫からしたらありがたい存在ですし、
ヤツデからしても見た目が不気味なのに、
昆虫が自分の蜜を吸ってくれて受粉できます。
まさにウィンウィンの関係が成立しているわけですね。
以上がヤツデに大量の昆虫が集まってくる理由です。
参考になっているようでしたら嬉しいです。