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独立栄養生物に該当する細菌はどうやってエネルギーを作ってる?




今回の記事では独立栄養生物に該当する細菌はどうやってエネルギーを作ってるのか?
解説したいと思います。

ただ、このことを理解するためには
いろんな前提知識が必要なので
順を追って解説していきます。

結論だけ知りたい方は下の方をご覧ください。

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細菌は独立栄養生物?それとも従属栄養生物?

私は獣医師で、
犬や猫が大腸菌やサルモネラ菌による食中毒の診察をよくしています。
当ブログ管理人のプロフィール

・大腸菌
・サルモネラ菌
・黄色ブドウ球菌

などは普通の細菌です。

こういった普通の細菌たちは炭酸同化をしません。
簡単にいうと炭酸同化とは二酸化炭素と水から炭水化物を作る同化の一種です。
二酸化炭素と水が混ざると炭酸であることから炭酸同化っていいます。
ちなみに炭酸同化には光合成と化学合成の2つがあります。

炭酸同化についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
炭酸同化と窒素同化の違いとは?わかりやすく解説

話を元に戻しますが、
大腸菌みたいな普通の菌たちは炭酸同化しないです。
簡単にいうと他人の栄養を奪うし、落ちているものを拾います
つまり自分で体の中に炭水化物を作って、それを使うことはできません。
これに対して植物たちは自分の体の中に
二酸化炭素と水から炭水化物を作ることができるわけですね。
そして自分で作った炭水化物を使うことができます。

だから植物は独立して生きていけるわけですね。
他人に頼っていません。
自分で働いてお金を稼いで自分で生活できる人と同じような感じです。

これを独立栄養生物といいます。

植物は炭酸同化して自分で炭水化物を作って
その炭水化物を利用して生きています。
これに対して動物は植物を食べたり他の動物を食べ、
その食べたものの中にある炭水化物を利用して生きています。

動物は自分で炭水化物を作っているわけではなくて
他から奪っているということです。
これを従属栄養生物といいます。

ここまでまとめると

独立栄養生物・・・植物
従属栄養生物・・・動物、一般的な細菌

ということです。

多くの細菌は他の生物が作って有機物を横取りします。
ですが、細菌の中には炭酸同化ができる変わった細菌もいます

「炭酸同化ができる細菌がいる」と書くと
「光合成ができる細菌がいるってこと?」って思った方もいるかもしれませんね。

よく考えてみてくださいね。
細菌はほとんどは従属栄養生物です。
他の生物が作った有機物(炭水化物など)を奪って生きています。
でも細菌の中には『炭酸同化』ができるものがいるのです。

炭酸同化はイコール光合成ではありません。
これは以前の記事でくどいくらい解説しています。

話を元に戻すと
細菌の中には炭酸同化ができる独立栄養生物がいるということです。

炭酸同化は

・光合成
・化学合成

の2つを指します。

だから炭酸同化ができる細菌ということは
光合成ができるか、あるいは化学合成ができる細菌がいるということです。
だから、光合成はできないけど化学合成ができる細菌だっていますし、
逆に化学合成はできないけど光合成はできる細菌だっています。

光合成ができる独立栄養生物である細菌たちもいれば
別の細菌で化学合成ができる独立栄養生物である細菌もいまるということです。

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光合成ができる独立栄養生物である細菌

光合成ができる独立栄養生物である細菌には

・紅色硫黄細菌(こうしょくいおうさいきん)
・緑色硫黄細菌(りょくしょくいおうさいきん)

などがいます。

その細菌がする化学反応式は普通の光合成の式と違います。

普通の光合成の式は

$6CO_2 $+$12H_2O $⇒$C_6H_{12}O_6 $+$6H_2O $+$6O_2 $

でしたね。

細菌の光合成の式は

$6CO_2 $+$12H_2S $⇒$C_6H_{12}O_6 $+$6H_2O $+$12S $

なので、普通の光合成の式とちょっと違いますね。
左辺で見ると普通の光合成の場合は$12H_2O $ですが、細菌の場合は$12H_2S $です。
細菌は硫化水素($H_2S $)を使います。

硫化水素を使う細菌は『多い』です。
『多い』と書いたのは他のものを使う細菌だっているからです。
たとえば$H_2 $(水素ガス)を利用する細菌がいます。
でも多くは硫化水素なので、ここでは硫化水素を前提に解説を進めますね。

話を元に戻します。
$6CO_2 $+$12H_2S $に光のエネルギーを吸収して
右辺の$C_6H_{12}O_6 $+$6H_2O $+$12S $ができます。
炭酸同化ができる細菌もきっちりとグルコース($C_6H_{12}O_6 $)ができるわけですね。
また、$6H_2O $ができるところも普通の光合成と同じです。

ただ最後が違います。
普通の光合成なら$6O_2 $ですが、細菌の場合は$12S $ができます

普通の光合成でも、二酸化炭素に水素をつけてグルコースを作ります。
二酸化炭素と水を混ぜているわけではありません。

二酸化炭素に水素をつけることを化学的には還元といいます。

酸化と還元の違い

・水素を失う反応⇒酸化
・水素とくっつく反応⇒還元

です。

ちなみに酸化はエネルギーが出る反応で
還元はエネルギーを封じ込める反応でもあります。

たとえば、

$2H_2S $+$O_2 $⇒$2S $+$2H_2O $

という反応があったときに
$O_2 $(酸素)が$2H_2O $(水)になる反応は
水素Hがくっついているので還元で
$2H_2S $(硫化水素)が$2S $(硫黄)になる反応は水素Hを失っているので酸化です。

細菌の光合成の式は

$6CO_2 $+$12H_2S $⇒$C_6H_{12}O_6 $+$6H_2O $+$12S $

でした。

話を元に戻しますね。
$6CO_2 $に水素Hがくっついて$C_6H_{12}O_6 $(グルコース)ができるので
還元ですね。
そして水素Hは植物の光合成なら水由来です。

逆に水の酸素Oはいらない物質だってことです。
だから光合成にとって酸素はいらない物質なのですね。
光合成にとって必要なのは水素ということです。

大丈夫でしょうか?

ちなみに

細菌の光合成の式は

$6CO_2 $+$12H_2S $⇒$C_6H_{12}O_6 $+$6H_2O $+$12S $

と光合成をする細菌は左辺に$H_2O $がありません。
左辺は水でなく硫化水素$12H_2S $になっています。

どうして光合成する細菌は水を使わないのでしょう?
$H_2O $のOは酸素ですね。$H_2S $のSは硫黄です。

周期表でみると酸素Oも硫黄Sも6族です。
縦の列が同じってことです。
では酸素Oと硫黄Sはどちらの方が周期表でみたら下にありますか?
硫黄Sの方が下にあります。

ということは硫黄の方が電子数が多いですし
原子としても大きくなります。
真ん中にある原子核に対して周りにある電子は遠いところにあります。
そこのところに水素がくっついているわけです。

だから硫化水素は真ん中の硫黄から水素まで遠いです。
だって最外殻電子が結合に関係しているわけですからね。

これに対して水の場合、酸素Oは硫黄より小さいです。
酸素Oの周りにいるH原子は硫黄SとH原子の場合と比べて近いところにいます。

だから水$H_2O $酸素と水素の関係の方が近い関係なので
水素Hを引っ張ってきやすいわけですよ。
これに対して硫化水素$H_2S $の場合は酸素OよりSの方が原子核から見たら最外殻電子は遠いので
水素Hを引っ張りにくいということです。

こんな感じで$H_2S $(硫化水素)と$H_2O $(水)があったときに
今地球上の植物たちはクロロフィルという光を吸収できる光合成色素を持っています。
クロロフィルで吸収した光はものすごいエネルギーになります。
だから$H_2O $のO酸素とH水素の結合を切って
水素Hだけとって酸素Oを捨てることができます。

ですが、大昔から存在する細菌の場合は植物にあるクロロフィルよりも弱い
バクテリオクロロフィルです。

バクテリオクロロフィルで捕まえる光のエネルギーは弱いです。
だから大昔のことですが、周りに水がいっぱいあったので
その水を使いたかったのではないか?といわれています。

水からバクテリオクロロフィルで水素と酸素を切って
水素を得ようとしたけど、光を吸収するパワーが弱いため
うまくいかなかったようです。

大昔は火山がいっぱいあったため
硫化水素もいっぱいありました。

細菌のバクテリオクロロフィルは水は切れないけど
硫化水素の水素と硫黄の結合は切れます。
なので細菌は硫化水素から水素を切って光合成に利用できたのです。
そして硫黄Sはいらないので捨てるわけです。

結果、

細菌の光合成の式は

$6CO_2 $+$12H_2S $⇒$C_6H_{12}O_6 $+$6H_2O $+$12S $

という反応が起こるわけですね。

温泉には硫化水素がいっぱいあるので今でも光合成できる細菌は存在します。
逆にそこらに池には光合成できる細菌はほとんどいません。
なぜなら硫化水素がないからでです。
光合成できる細菌を見るために温泉に行ってみてはいかがでしょうか。

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化学合成ができる独立栄養生物である細菌

くどいようですが、

細菌ができる炭酸同化は

・光合成
・化学合成

があります。

光合成ができる細菌については先ほど解説したので
次に化学合成ができる細菌について解説しますね。

ちょっと面白い話を先にします。
生物って無機物(例:水)を直接エネルギー源として利用することってできないのを知ってますか?

たまに「私、水を飲んだだけで太っちゃうの!」
って人いませんか?
これは絶対にないです。
水を飲んだだけでは絶対に太りません。

なぜなら生物は無機物のエネルギーは使えないからです。
水の中にエネルギーは入っています。
でも、いくら水を飲んでも水の中のエネルギーを私たちは利用できないのです。

「でも、植物は光合成で水を利用しているのでは?」
とツッコミを入れてくる人もいるかもしれませんね。

植物は水の中にあるものをグルコースにして
そのグルコースを呼吸で分解してATPにして
ATPのエネルギーで生きているのです。

だから植物だって水を直接エネルギーにして生きているわけではありません。
あくまでもグルコースという有機物のエネルギーを取り出して使っているのです。
だから普通の生物は無機物のエネルギーで直接生きていくことはできません。

でも、一部の細菌は亜硝酸、アンモニア、硫黄などの無機物を酸化する際に発生する
化学エネルギーを利用して炭酸同化(二酸化炭素と水素から有機物を作る)して
できた有機物を呼吸で壊して生きています。

ちなみに有機物(有機化合物)って何か?については
私が以前、別サイトで解説しているので興味のある方はご覧ください。
有機化合物とは?簡単に例を挙げながらわかりやすく解説

だから普通の植物や動物は無機物は絶対に生きていくうえでエネルギーにはなりません。
でも、化学合成細菌といわれる一部の細菌は無機物を酸化します
無機物からエネルギーが出てきたら、
そのエネルギーを使って炭酸同化をしてグルコースなどの炭水化物を作って
それをエネルギー源にして生きています。

ちょっとややこしい話ですが、
そういうような炭酸同化をやる細菌がいるということです。

たとえば化学合成をする細菌に亜硝酸菌がいます。
亜硝酸菌は$NH_3 $(アンモニア)に$O_2 $(酸素)をぶつけると
$HNO_2 $(亜硝酸)と$H_2O $(水)ができます。
この反応は酸化だからエネルギーが出ます
この出てきた化学エネルギーで二酸化炭素と水素から有機物を作ります。

光合成の場合は光のエネルギーで二酸化炭素と水素から
有機物であるグルコースを作りました

化学合成の場合は無機物を酸化したときに出てくるエネルギーで
二酸化炭素と水素から有機物を作ります

たとえば硝酸菌は化学合成をする細菌ですが、
亜硝酸を酸化して硝酸になるときに出てくる化学エネルギーで炭酸同化をします。

ちなみに

化学合成をする細菌には

・鉄細菌
・硝酸菌
・硫黄細菌
・亜硝酸菌

などがいます。

さらにちなみに
化学合成ができる植物はいません。
化学合成は細菌しかいません。

以上で解説を終わります。



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