前回の記事ではどうして秋になると葉っぱが紅葉して
落葉することがあるのか?解説しました。
⇒離層形成とは?落葉のメカニズムをわかりやすく解説
今回の記事では植物の気孔の働きについて説明します。
植物における気孔の働き
気孔というのが植物の葉っぱの表裏にあります。
特に裏側に多いです。
で、
・酸素
・二酸化炭素
・水
を出します。
そして酸素、二酸化炭素、水のうち、
・酸素
・二酸化炭素
は入れもしています。
気をつけてください。
気孔から水、酸素、二酸化炭素が出ていきます。
気孔から二酸化炭素も酸素も入ってきますが、水は入ってきません。
水は根っこからしか原則として
入ってきません。
だから気孔は水を取り込んでいると思ったら大きな間違いです。
気をつけてください。
で、上記物質は気孔が閉じたり開いたりしてコントロールしています。
ではどういうときに気孔は閉じたり開いたりするのでしょうか?
2つの理由があります。
どういう時に気孔は開閉している?理由1
1つ目の理由として光合成したい時に気孔が開きます。
光合成には二酸化炭素が必要ですね。
⇒光合成の仕組みを図を使いながらわかりやすく解説!中学高校生物の復習
なので周りにある二酸化炭素をゲットしようとするわけです。
ただ、大気中にある二酸化炭素濃度って低いです。
二酸化炭素濃度が低いながらも植物は取り込みたいので
気孔を開くわけです。
光合成は太陽の光が必要。
だから、昼間に気孔が開いている植物が多いです。
でも、夜、気孔が開いている植物もいますけどね。
だから気孔は光合成のために二酸化炭素を取り込むためだけに
開くわけではありません。
どういう時に気孔は開閉している?理由2
他にどんなときに気孔が開くのでしょう?
体温調節です。
植物だって暑いと死滅します。
真夏の日向って気温が37℃くらいになることもありますよね。
真夏の37℃という高温のとき、
アスファルトの横の道路の土の日向で測ってみてください。
50℃くらいありますから。
炎天下の中で駐車している『自分の』車の
ボンネットの上で生卵を落としてみてください。
(他人の車には絶対にやったらダメです)
卵焼きができますよ。
だからそこまでいかないにしても、
植物が生えているところって温度が高いです。
生卵が卵焼きになるのは、高温のためにタンパク質が変性、
酵素が壊れるからです。
これと同様に植物だって高温になると体の中の酵素が壊れてしまいます。
だから温度を下げたいわけです。
温度を下げるときにどうするか?
私は獣医師なので人間とペットの体を比較して考えるのが得意です。
犬や猫は手足の先のパッドと呼ばれる場所くらいしか汗をかけません。
でも、人間だったら高温だと全身で汗をかきますね。
その汗が蒸発する時に、気化熱となって体から熱が奪われます。
体温をちょっとでも下げることができるわけですね。
植物も一緒です。
植物も蒸散といって、気孔から水分を飛ばします。
水分が逃げることで熱を奪ってくれるので体温を下げることができるのです。
ですから、植物は暑い時って気孔が開く結果、
自分の体を冷やすことができるのですね。
ただ、ここからが難しいところですが。
真夏のカンカン照りのとき、しばらく雨が降ってないとき、
植物の体温が上がったからということで気孔が開くわけですが・・・
でも、そんなときって湿度が低く、乾燥していたりします。
そんなときに気孔が開くと、植物の中の水分がドバドバ出ていってしまいます。
確かに体温は下がります。
でも、植物から水分が出ていくと、今まで水分があったことで植物は
上記画像のようにシャキーンと張りよく伸びているわけです。
膨圧というのがかかって。
でも膨圧がなくなるくらい水分が出ていってしまうと
体温は下げられるけど、植物全体はフニャフニャになってしまうのです。
真夏の暑い時、夕方18時くらい道端の道路当たりの草がフニョフニョになってませんか?
これは気孔が開いたため水分が飛んで行ったからです。
もしそんなフニョフニョの植物に水を与えると次の日、またシャキーンと
元に戻ります。
そんなこともあって、植物は真夏の暑い時に気孔を開くのは危険です。
なぜなら体温を下げないといけないけど、水分が飛びすぎてしまうからです。
そこで、昼間は頑張って、夜に少しでも体温を下げようと
夜、湿度が少し高まった時に気孔を開く植物もいます。
だから気孔って一概に昼間ばかり開いているわけではありません。
また、砂漠の植物は昼間、気孔を開けません。
光合成をしたい、気孔を開きたい、
でも、気孔を開いたり水分が飛んで行ってしまいます。
だから夜の間だけ気孔を開くのです。
・二酸化炭素を取り込みたい
・体温調節をしたい
という2つですね。
昼間に気孔を開けばよいわけですが、
砂漠など、昼間気孔を開くのが厳しい植物の場合、
夜に気孔が開くタイプもあるということでしたね。
植物の気孔ってどんな形?画像を使って説明
気孔はどういう仕組みで開くのでしょう?
まず上記画像の①をご覧ください。
2つの細胞がくっついているとイメージしてください。
それぞれ孔辺細胞(こうへんさいぼう)といいます。
そして孔辺細胞同士がくっついているわけですが、
隙間ができていますね。この隙間が気孔です。
孔辺細胞は細胞壁の厚さが違いますね。
気孔側の細胞壁は厚く、気孔と反対側の細胞壁は薄いです。
で、⓵で孔辺細胞の浸透圧がなんらかの理由で上がると
周りから水が入ってきます。
すると、孔辺細胞が膨れます。
膨れるわけですが、気孔側の細胞壁は厚く反対側は薄いため
反対側がゴム風船のように膨れます。
結果、上記画像の②のような状態になり、気孔側の細胞壁が反り隙間ができます。
だから気孔が開くときというのは孔辺細胞の浸透圧が上がり、
水が入ってきて、膨圧といって細胞壁を押す力が強くなった時に開くわけですね。
逆に気孔が閉じるときというのは
孔辺細胞の中の水分が外に出ていく時です。
周りに水分がいっぱいあって、その水分が孔辺細胞に入ってきたときに
膨圧がかかって気孔が開くわけです。
逆に孔辺細胞内の水分が少ないときに、孔辺細胞の膨圧が低下して気孔が閉じるわけです。
こんな感じで気孔の働き(気孔の開閉)のポイントは
孔辺細胞の細胞壁の厚さが気孔側と反対側で違うために起こるということです。
で、浸透圧の関係で水がたくさん孔辺細胞には入ってくると気孔が開き、
孔辺細胞内の水分がなくなってくると気孔が閉じるという話でした。
以上で解説を終わります。