今回解説する内容は
ハーバーボッシュ法とはどういうものなのか?という話です。
ハーバーボッシュ法は$NH_3 $(アンモニア)の工業的製法となります。
もしハーバーボッシュ法がこの世に存在しなかったら
もしかしたらあなたは地球に生まれていないかもしれません。
それくらい地球の歴史を語るうえで欠かせないものです。
ハーバボッシュ法は地球の人口を増やしたといわれています。
もしハーバーボッシュ法が考案されていなければ地球の人口は現在18億人で
止まっていたのではないか?と言われています。
2021年の世界人口は78憶7500万人です。
なので、ハーバーボッシュ法のおかげで人口が4倍以上増えたといえますね。
ハーバーボッシュ法とは?
ハーバーボッシュ法は$NH_3 $(アンモニア)の工業的製法のことです。
20世紀最大の発見といわれています。
$NH_3 $(アンモニア)を作ってどうして20世紀最大の発見といわれるのでしょう?
$NH_3 $(アンモニア)って公衆便所と言われるような場所にいくと
感じる、鼻をつくような臭いの一種です。
$NH_3 $(アンモニア)は気体ですが
これ単独だと有毒です。
$NH_3 $(アンモニア)というのは肥料の原料となります。
硫酸アンモニウムとか塩化アンモニウムとか硝酸アンモニウムとか、
いわゆるアンモニウム塩というのは窒素肥料として使われます。
アンモニアが大量に生産されるということは
同時に窒素肥料も大量生産することが可能になるということです。
$NH_3 $(アンモニア)が大量に作られ、
そして窒素肥料が大量に作られるということは
植物の栽培量は増えますね。
たとえば小麦の栽培量が増大することになります。
小麦が大量生産されたらパンをたくさん作ることができますね。
食物の生産量が増えるということです。
結果的に地球の人口が増加するということにつながるわけですね。
こんな感じでハーバーボッシュ法のおかげで$NH_3 $(アンモニア)を大量生産することができるようになった結果、
窒素肥料の大量生産につながり、植物の大量栽培が可能になり、
私たち人間の食料が増えた結果、地球の人口が増えたということです。
ではいったいどういう工夫をしてアンモニアを作っているのでしょう?
原料は空気中の窒素と水素です。
空気の78%は窒素です。大量に窒素は存在しています。
そこからアンモニアを作っています。
なので、ハーバーボッシュ法は空気からパンを作る方法と言われたこともあります。
ハーバーボッシュ法はどんな製法?
化学式はすごく単純です。
$N_2 $+$3H_2 $⇔$2NH_3 $
です。
ただ窒素$N_2 $はものすごく安定した気体です。
安定というのは反応しにくいという意味です。
だからなかなか$N_2 $(窒素)を反応させてアンモニアを作ることができませんでした。
$N_2 $と$3H_2 $を接触させたからといって
簡単にアンモニアができるわけではないということです。
いろんな工夫が必要です。
まず反応促進剤である触媒の検討から入りました。
ただ、窒素を反応させる触媒が見つかっても
高額だったら工業的に意味がありませんね。
工業などのビジネスは安く作って高く売る必要があるからです。
そこで研究の結果、コスト的にも安い触媒が見つかりました。
$Fe $(鉄)です。
いろんな金属を試して、その中で$Fe $(鉄)がベストだということを
ハーバーさんとボッシュさんが見つけました。
ただ、$Fe $(鉄)が触媒なだけではうまくいきません。
さらに高温、高圧という条件が必要でした。
高圧、つまり加圧するということはその圧力に耐えれるだけの丈夫な容器が必要になります。
ハーバーボッシュ法として工業化するためにいろんな容器を作って
その容器内で反応させてアンモニアを作っていくわけです。
でも、そんな容器を開発するまでに
たくさんの容器が破裂して失敗したそうですよ。
まぁ、考えようによってはエジソンみたいな感じでしょうね。
何回失敗してもあきらめずに実験したのでしょう。
・高温、高圧
・鉄触媒
によってアンモニアを作る方法です。
ところでなぜ高温に、高圧にしないといけなかったのでしょう?
なぜハーバーボッシュ法では高温、高圧という条件が必要だった?
まず高温にする理由から説明しますね。
反応速度を大きくするためです。
温度が高い方が反応速度が高くなります。
ちょっとでも早くアンモニアができた方が
1日によりたくさんのアンモニアが生産できますからね。
次に高圧にする理由ですが。
ルシャトリエの原理という原理を応用しています。
加圧すると容器の体積は小さくなります。
餅つきを想像してみてください。
上から下に餅に向かって杵(きね)という道具を使って
餅をボンボンついたら、餅の体積って小さくなりますよね。
ここからは餅ではなく一般的な化学の話になります。
体積が小さくなるということは
中の密度は大きくなります。
中の分子の数を減らそうと平衡が移動します。
$N_2 $+$3H_2 $⇔$2NH_3 $
左辺は$N_2 $の1と$3H_2 $の3で4分子、
右辺は$2NH_3 $だから2分子ということで
分子数を減らすには右に反応が進めばいいわけです。
加圧すると右に平衡が移動する、
つまり、アンモニアの生成量が増えるわけです。
高圧にする理由は平衡を右に移動させてアンモニアの生成量を増やすためです。
こんな風にいろんな条件を考えて
どういう状況が最適なのかを研究した結果、
ハーバーボッシュ法が導き出されました。
ハーバーボッシュ法はノーベル化学賞を受賞しています。
ハーバーボッシュ法が考案されたのは1904年で
ノーベル化学賞を受賞したのは1918年です。
科学者の中ではこのハーバーボッシュ法を20世紀最大の発見だという人もいました。
それくらいものすごい方法です。
ちなみに
$N_2 $+$3H_2 $⇔$2NH_3 $
で最初の窒素と水素の最初のスタートの量を窒素をいくらで水素をいくらにするのか?
によってもできるアンモニアの生成量も変わってきます。
これも試行錯誤して、
結果、窒素1で水素3が一番アンモニアの生成量が多くなったそうです。
ハーバーボッシュ法のおかげで肥料が効率よくできるようになって
植物を効率よく生産できるようになり、
現在に至っているわけです。
以上でハーバーボッシュ法についての解説を終わります。