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細胞膜を介して水が浸透圧の低い所から高い所へ移動する理由




この記事では細胞膜を介して
水が浸透圧の低い所から高い所へ移動する理由について
わかりやすく解説します。

まずは前提知識から解説します。

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細胞膜の特徴:拡散とは?

細胞膜の性質として拡散があります。

容器の中に水を入れて、
次に砂糖を入れたとしましょう。
すると砂糖は溶けますね。

容器に入れた水を溶媒といいます。
溶媒とは物を溶かす液体のことです。
液体だったら何でも溶媒です。
ただ、水は大変優秀な溶媒だから
よく実験で水を溶媒として利用します。

たとえば、ベンジンとか石油も溶媒の一種です。

とはいえ、植物などの生物は水を溶媒にしています。
このことは地球上の生物に限った話ではありません。
宇宙でもそうです。
火星や金星に生物がいるかどうか、わかりませんが
生物探査で最初にやることは、その星に水があるかどうかです。

水があれば生物がいる可能性があると考えます。
何が言いたいか?というと、それくらい水というのは優秀な溶媒だということです。

ところで水が入った容器の中に砂糖の塊を入れましょう。
水に溶かす物質を溶質といいます。
だから水の中に入れた砂糖の塊は溶質です。

・水=溶媒
・砂糖の塊=溶質

です。

砂糖の塊を水の中に入れると自然に溶けていきます。
当たり前の現象です。

ところで水の中に入れた砂糖の塊はどうなるでしょう?

砂糖水になります。
当たり前のことですが、均一の濃度になります。
この現象を拡散といいます。

当たり前の話過ぎて理屈を考えない方もいるかもしれません。
これは水分子の話になります。

水分子は動いています。
氷になっても動いています。

動いている水分子は小さいですが、砂糖の分子に当たると
跳ね返ったりしながら全体に砂糖の分子を散らかして均一の濃度になっていきます。
ただ、室温程度だと均一の濃度になるのに時間がかかるので
私たちはスプーンで混ぜたりしますが。

あるいはお湯で溶かす人もいるでしょう。
お湯の方が良く溶けるからです。

温度を上げると水分子の動きが早くなるため、
砂糖の分子をどんどん動かしてより早く均一の濃度になります。
以上が拡散のお話です。

拡散を理解したら次に浸透について説明します。
この浸透という現象が理解できると
細胞膜を介して水が浸透圧の低い所から高い所へ移動する理由がわかります

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浸透とは?

浸透を理解するためには特殊な状況を設定しないといけません。
容器を半透膜で仕切る装置を作ります。

実験ではセロハン紙を使います。
セロハン紙には小さな穴が開いています。
この穴は光学顕微鏡では見えません。

このセロハン紙で仕切った容器の左右に砂糖を溶かすのですが、
左右で濃さが違います。
左の砂糖水の方が薄い濃度で、右の砂糖水の方が濃い濃度です。

言い換えると左より右の方が甘いです。
くどいようですが、半透膜には顕微鏡では見えない程度ではあっても
小さな穴が開いています。

だから上記容器は左右がつながっている状況です。
全体が1つの容器だということです。

ということは、

先ほど解説した『均一の濃度になる』という拡散が起こります。

右側の濃度が濃い側の砂糖は左側の薄い側に移動しようとしても
移動できません。
拡散したくても半透膜の穴が小さすぎて右から左に行けません。

でも、水の分子は砂糖の分子より小さいため移動できます。

水は濃度の薄い左から濃い右に移動することで、
右側の濃度を薄めることができます

濃い砂糖水の中に左側の水が移動することで
濃度が薄まるわけですね。
言い換えると、左と右の濃度差が縮まるということです。

この現象を浸透といいます。

浸透の重要な点

水は濃い方へ移動する

ということです。

またこのような浸透を起こす力を浸透圧といいます。
ただ、浸透圧は水が入り込む力ではありません。

浸透圧は水を引き込む力のこと

です。

具体的に説明しますね。
右側の濃い砂糖水と左側の薄い砂糖水がお互い水を引っ張り合っています。
ただ引っ張る力は濃度が濃い方が薄い方より強いです。

水を引っ張る力は濃度に比例する

ということです。

ですから浸透圧としては左側も右側もお互い存在しています。
でも、濃度が濃い方が水を引っ張る力が強いので、
今回のケースでは右側に水が移動するわけです。

で、ここからが重要です。

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なぜ細胞膜を介して水が浸透圧の低い所から高い所へ移動するの?

上記図における半透膜は細胞膜と性質が同じです。
つまり、

半透膜=細胞膜

と理解してください。

だからここまでの記事を読んでいただければ、
どうして細胞膜を介して水が浸透圧の低い所から高い所に移動するか、
わかりますね。

濃度が濃い方(浸透圧が高いほう)が水を引っ張る力が強いからですね。

ここでは動物の細胞の一種、赤血球を例に考えてみましょう。
食塩水の入った試験管に赤血球を入れます。
赤血球には当然細胞膜があります。

ここでは有名な実験をご紹介しますね。

0.9%の食塩水に赤血球を入れても変化しません。

赤血球の中の濃度の大きさを食塩に換算すると0.9%相当なのです。
先ほどの浸透圧で考えると外側の0.9%の食塩水と赤血球内ので引っ張り合いをしても
浸透圧が同じなので、水の移動が起こりません。

だから赤血球は変化しないのです。
こういう0.9%食塩水を等張液といいます。

では3%の食塩水に赤血球を入れるとどうなるでしょう?
赤血球は0.9%で食塩水は3%ということは

0.9%の赤血球<3%の食塩水

くどいようですが、濃度が濃いほうが低いほうを引っ張るわけですから、
試験管内の3%食塩水が赤血球内部の水分を引っ張ることになりますね。

よって3%食塩水に赤血球を入れると赤血球の体積は減少して赤血球は縮みます
ちなみに3%食塩水を高張液といいます。

逆に試験管内の食塩水を0.3%にして、
そこに赤血球(食塩換算だと0.9%だとわかっています)を入れてみましょう。

0.9%の赤血球>0.3%の食塩水

です。

お水は濃いほうに移動しますから(濃度の濃いほうが引っ張るから)
赤血球の方に水が移動しますから、
赤血球が膨張します。

あまりにも赤血球内部に水分が入ると
細胞膜が耐え切れず破裂します。

結果、赤血球内部の物質が外に出ます。
この現象を溶血といいます。
この場合、0.3%の食塩水を低張液といいます。

こういう現象が細胞レベルで起きています。

この0.9%の食塩水なら赤血球が壊れないということがわかっているので
当院(私は開業獣医師です。だから写真も用意できます。)でも使っている生理食塩水です。

当院でも犬や猫の血管から生理食塩水を点滴したりしますが
ここまで解説した理屈のおかげで赤血球が壊れません。

以上、だいぶ細かい話をしましたが解説を終わります。



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